
2020年がこんな年になるとは、誰が想像しただろうか?
地球規模で新型コロナウイルス感染症がまん延し、人と会うことも、誰かと一緒に外食することも、国内外を旅行することもままならなくなった。そもそも“コロナウイルス”って何? と思っているまに、さまざまな行動が制限され、リモートワークが日常となり、東京オリンピックも1年延期となってしまったのである。まさに新型コロナウイルス一色の2020年となりつつある。
そんななか、私にとっての2020年の重大ニュースといえば、やはり94年の歴史に幕を下ろす『としまえん閉園』を外すわけにはいかなかった。
そもそも94年の歴史というけれど、私は、その半分くらい遊びに行っていたことになる。そのうち30年くらいは、練馬区民で、すぐ近所だったため、自転車でよく行ってたものだった。夏の花火大会シーズンは、ご近所さん優待券が配られ、何度も花火を見に行き、夜のとしまえんを楽しんだ。ビールを飲んだあとのフライングカーペットは最高だった。温泉にも通い、いろいろな湯を満喫したり、アクアトレーニングにも参加したりした。そうして、いくつもの季節が巡り、ある日、気がついたら、『としまえん閉園』のニュースが飛び込んできたのだ。そのニュースをはじめて聞いたときは、まったくもって意味がわからなかった。一体どうして?
結局、抗うことができない時代の流れなのだと、自分自身のなかで納得するしかなかった。ならば、せめて、じっくりゆっくりと、としまえんのラストを楽しみたいものだとの思いが、日に日につのっていった。
そこで、あと10日で閉園という、暑い暑い夏の日に、としまえんに行ってきた。
コロナ禍とあり、密をさけるための入場制限がなされており、予約制となった入場チケットを購入。そしてマスクをして、いつも通り、自転車でとしまえんへ向かったのだった。すでに暑さで、とろけそうだった。
しかし……。門をくぐった途端、気分があがり、としまえんの楽しい記憶がどんどん甦ってくる。あれも乗りたい、これも乗りたい。気持ちは暑さをこえてゆく。そして乗ってみた。
フライングパイレーツは、やっぱり面白かった! コークスクリューも、急激な Gがたまらない!
『240名様、昇天。』
『三半規管で、あそびませ。』
という、かつての有名な広告コピーもついつい思い出してしまった。
そう、あのころ、としまえんの広告は、めちゃくちゃ勢いがあった。何十年経っても、あのころの広告コピーとビジュアルは、すぐに浮かんでくるほどだった。
そして、回転木馬「カルーセル エルドラド」は、変わらずアールヌーボー式の豪華な装飾が素敵で、大人になった今なお、見ているだけで夢心地になってくる。そうそう、練馬こぶしハーフマラソンに参加したときは、としまえん内もコースに含まれていて、この回転木馬の周りを感動しながら走ったものだった。
そうして、忘れてはいけないのが、としまえんのプール。昔は、よく遊びに行き、流れるプールでぷかぷか浮かんだなぁ……。
こうして次々に甦ってくる、としまえんと私の思い出。そんな感慨にふけっていると、猛暑の1日は、あっという間に過ぎていった。
懐かしいような、寂しいような、楽しさそのままのような……。
いやはや、本当におわってしまうのだろうか?
いいえ。私のなかでは、永遠にそこに『としまえん』は存在しつづけているままなのかもしれない。そんな思いになっていった。