
第28回大会を迎えた『アンコールワット国際ハーフマラソン』。
今回は、世界78の国と地域から1万人を超える市民ランナーが集い、新型コロナウイスのパンデミック発生以来、最大規模の大会となった。そのうち、6500人がカンボジア人、3654人が海外からの参加者だという。私もその一人だった。米国、英国をはじめ、海外からのランナーが戻ってきたことが目に見えて実感でき、みんな楽しそう。この国際色豊かな大会の雰囲気が、やはりたまらない。
私自身にとっても、今回は、ちょっと特別な大会だった。本大会で初ハーフに挑戦して以来、今年はちょうど10年の節目の年だったのである。
「走るなんてあり得ない!」と思っていた私が、アンコール・ワットに行くために走り出し、こうして10年もハーフを走りつづけることができたのだから、驚きであり、感慨深いものがあった。
私の心を強く揺さぶった、「遺跡の中を走る」×「地雷禁止を訴える」という大会テーマは、今も変わらず。参加費の一部が地雷犠牲者の自立や義手義足の製造支援などに寄付されるチャリティーマラソンであることも、この大会の大きな魅力となっている。
走るのに、理由などいらないのかもしれないけれど……。「誰かのために走る×遺跡の中を走る」。これが、私が今日も走る理由の、やはり大きなモチベーションになっていた。記録のためなら、おそらく気力はつづかず、とっくに走ることをやめていただろう。
おかげさまで、今回も、地元の子どもたちの声援にほっこりし、また車椅子ランナーたちとも、何度も声をかけ合いながら走りつづけた。「子どもたちが可愛い!」「どこから来たの?」などなど、多国籍ランナーたちとの会話もはずむ。そんな、いくつもの優しいコミュニケーションを楽しみながら、アンコールの森を駆け抜けるこのレースは、やはり「走る歓び」に満ちている。
10年前、スポーツ雑誌『Number Do』(2014.1.29号)で、この『アンコールワット国際ハーフマラソン』をモチーフに、“チャリティランになぜ、参加する?”──の記事を執筆したが、私は、こんな文章で締めくくっていた。
“誰かのために走る、チャリティラン──この新たな「走る歓び」に遭遇し、私自身も爽やかな充実感に満たされていた。皆がみんなを応援していた21km。走ることは退屈で辛いことと思っていたけれど、気がつけば、好きになっている私がいた。自分のペース、テーマで走ればいい。それは人生と同じなのだ。”────と。
なるほど。10年経った今も、まったく同感だった。一言も修正する必要はなかった。