交通規制にご協力を!


  今回が第一回となる「練馬こぶしハーフマラソン」。
 ウチから100mくらい先にある環状八号線もマラソンコースになっていたため、大会当日は、私もカメラを持って見学に行った。地元のマラソン大会ははじめてだったので、ぜひ「走る側」で参加したかったのだが、定員締切で出場できなかったのだから仕方がない。「見る側」を楽しむことにした。
 光が丘公園を午前8時にスタートするレース。家のポストに配布された、同大会の“応援マップ”チラシによると、ウチのすぐ近く(約6.8キロ地点)を先頭ランナーが通過する予想時刻は8時20分ころとなっていた。そこで家を8時すぎに出発して環八に行くと、沿道にはすでに多勢の地元住民が応援のために待機していた。そして道路の向こう側がコースになっていたため、信号を渡ろうとすると、「ここは横断できません」と、いきなり大会スタッフに制されたのである。「えっ?」まさか、道路を渡れないことがあるなんて想像もしていなかった。思わず、「あちら側に渡らないとレース見られないでしょ。写真が撮りたいんだけど…。どうしたらいい?」と言葉にした。そして心の中では、「聞いてないよ~、そんなこと。誰の許可を得て歩行者の横断規制をしているの?」と、つぶやいていたのだった。
 市民ランナーとして、何度かさまざまな地域で開催されるマラソン大会に参加している私だったが、いざ自分が大会開催地の住民の立場になると、こんな思いになっていたのである(苦笑)。
 すると、「あちらの信号なら渡れます」と大会スタッフに案内され、かなり迂回して環八を渡ることができたのである。やれやれ。
 そして8時21分、予定どおり、先頭ランナーが登場。公務員ランナーとして有名な川内優輝選手が圧倒的な速さで通過していった。そして、しばらくすると、市民ランナーがぞくぞくやってきた。そう、多勢のランナーが道幅一杯にひしめき合いながら走ってきたのだ。環八2車線のうち1車線のみの交通規制だったため、道幅が狭いうえに、すぐ横を車が並走してのレースとなっていたのである。また関門の制限時間もきびしく、最後のランナーが通過したのが9時ころ。約40分の間に、約5000人のランナーが通過していったことになる。
 その間、交通規制を知らずにやってきた近隣住民の、苦情の声もちらほら聞こえ、また営団地下鉄・平和台駅前の交差点では、信号が青になるたびに街の人々が横断し、今度はランナーが渋滞にはまっていた。なるほど、こういうことか……。練馬区という小さな自治体で開催される都市型の市民マラソン大会は、参加する市民ランナーと、そこでふつうに暮らす住民とが、協力しあわないと成り立たないものだったのだ。
 翌朝の新聞を読むと、「交通規制を周知するため、住民説明会は8度実施。説明チラシは8万部以上を配った」(朝日新聞)とのことだった。8度の説明会とは、誰を対象にしたのだろう。沿道の商店街の人たちだろうか? そして、たしかにコース沿道に暮らす、私の家にも“交通規制のお知らせ”チラシは配布されていた。しかも読み返すと、ちゃんと「規制時間内は、コース内の立ち入りや横断ができない場合がありますので、ご注意ください」と書かれていたのである。
 それはそうかもしれないが…。マラソンに興味がある私でさえ、その詳細まで読んでいなかったのだから、興味のない人ならチラシを読まずに捨ててしまう可能性が高いのではないだろうか。そんな思いになっていった。
 ところがである。大会が終わって10日ほど過ぎたある日のこと。図書館で借りた本の返却期限が記されたしおりの裏面に、「交通規制にご理解・ご協力を!」と題する、マラソン大会に伴う交通規制の詳細を案内した文言を発見したのだった。こんなところにも告知されていたとは…。本を返却する日まで、私はまったく気づきもしなかったのだ。なるほど。限られた大会運営予算のなかで、地道に一生懸命、告知していたんだなぁ…と気づかされ、大会実行委員の方々のひたむきな努力に頭が下がる思いになったのである。
 ともあれ、第一回「練馬こぶしハーフマラソン」は無事終了し、大会そのものは、美しい桜の季節が堪能できる、とても気持ちのいいレースとなった。今回は、定員締切で大会への参加が叶わなかったけれど、来年こそ私も走るぞ! 何と言っても、馴染みの街を駆け抜ける、地元レースなのだから。


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