お花見ラン


 桜が咲くころは、1年でいちばん心がときめく季節。開花したというニュースとともに、明日の天気や気温が気になり出す。満開のころはいつだろう。お花見はどこがいい? 見頃はいつまでだろう。そんな話題に心はそわそわしてくる。そして、走り始めてからというものは、お花見ランもたまらない魅力になった。満開の桜のトンネルの下を走れたらどんなに楽しいだろうか。ハラハラと花びらが舞い散るなかを走るのも素敵…。
 今年は東京の桜の開花がちょっぴり早かったため、3月の終わりには、どこもかしこもお花見ムードになっていた。そんなか、2015年3月29日(日)に、第一回『練馬こぶしハーフマラソン』が開催された。練馬区の都立光が丘公園をスタートし、笹目通り(オリンピック道路)・目白通り・環状八号線・川越街道と区内の主要幹線道路などを走り、ふたたび光が丘公園に戻ってくるコース。東京を南北、東西にわたって通る幹線道路の数々を、ぐるり駆け巡るレースというわけだった。
 練馬区民である私も地元で行われる大会に参加しようと、昨年秋、エントリーを試みた。が、募集開始日の午後2時に申し込んだものの、すでに定員締切となっていたのである。練馬区で開催されるという実にローカルな大会なのに、こんなにも人気だったとは、思ってもみないことだった。発表によると、定員5千人に対し、区民枠の千人は募集開始15分で、また一般枠も約4時間半でいっぱいになったらしい。
 当日は、ウチのすぐ近くの環状八号線もコースになっていたため、見学に行くことにした。環八沿道に着くと、まもなく先頭ランナーが見えてきた。予想通り、今大会のゲスト、公務員ランナーとして有名な川内優輝さんだった。間近で見ると、川内選手の走りは想像以上に速い。圧倒的な速さで通過していった。しかも後続ランナーの影さえみえないのである。
 しばらくすると市民ランナーがぞくぞくやってきた。沿道では地元の住民たちが、どこでもらったのか、応援用の小さな旗をふりながらエールを送っている。見渡すと、道沿いに途切れることなく応援はつづいていた。そしてラストのランナーが通過していくと、人々は静かに去っていき、ふだんの日曜日の風景にもどっていったのである。
 その後、私は自転車で光が丘公園へ行くと、沿道の桜は見事に咲き誇り、美しさ満開。ラスト3キロ地点からはじまる桜のトンネルは圧巻で、ランナーたちはそこをくぐり抜けゴールへと向かっていた。こんなに美しいラストが待っていたなんて。ハーフを走り抜いたランナーたちの、感動の波動が伝わってくるようだった。
 翌日、私も桜の美しさに誘われて、お花見ランへ出かけていった。気温は20度。ゆっくりペースで走っていると、そよ風がそよそよと吹いてきて気持ちいい。前日走れなかった、光が丘公園の桜のトンネルも走り抜け、桜・桜・桜の季節を満喫した。そして、走りながら、こちらでパチリ、あちらでパチリと写真撮影。桜の花々は、それぞれの表情を魅せながら、ほんのひとときの命の輝きを放っていた。
 それにしても、よかった。こうして春を迎えることができて。昨年1年はいろいろなことがあったけれど、きびしい冬の後にも必ずあたたかな春はくる。そして新しい季節は、はじまっていくのだ。そんなこんな思いにふけながら、美しい桜の季節にことしも巡り会えたしあわせを、ゆっくりゆっくりとかみしていったのである。


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