Oh Sentaku!


 年齢のせいか、何気ない言葉や歌にジワーと感動することが多くなったようだ。今日もランチをとりながら見ていたお昼のテレビ番組の間に流れたCMソングに、思わず引き込まれてしまった。時々目にし、耳にしていたCMだったけど、じっくり聞いてみると、何とも優しく切なく、そして元気の出てくる歌詞なのだ。

 はたらいて 泣いて 食べて 笑って
 恋して 走って ころんで また笑って
 生きることはよごれること だから洗おう
 Oh!Sentaku Oh!Sentaku Oh!Sentaku yeah ……

 ホント、人生は働いて、泣いて、食べて、笑って…の繰り返し。そして、恋して、走って、ころんで、また笑って…。ああ意地らしいじゃないですか。ころんでも笑って生きているのですよ。そうして、生きることはよごれること〜♪このあたりで、もう号泣気分(?)になるのである。青い空をバッグに白い洗濯物が踊る映像も、気持ちよくて可愛らしくて、ちょっぴり切なくて。だから洗おう、Oh!Sentaku〜♪ そう、明日も元気でがんばろう!と、自分にエールを送りたくなってCMは終わる。ライオンの洗剤「トップ」のCMソング、「おせんたくのうた」である。
 作詞・作曲を手がけたのは永野亮さんという、ロックバンド「APOGEE」のボーカル&ギター担当らしい。1979年生まれだから、今は32歳という若さである。そんな若い青年に泣かされてしまうのか…と思いつつ、この胸の奥のやわらかい部分をふわっとつかまれ、泣きたい気分にさせられるのは、1989年に公開されたイタリア映画「ニュー・シネマ・パラダイス」を見たときの気分に似ているようにも思った。
 当時、ま20代だったわたしは、映画館でこの映画を見ながらハンカチをにぎりしめたものだが、館内では号泣してすすり泣く声さえ聞こえてきたほど感動の映画だった。未だに生涯ナンバー1の映画である。シチリアで育った映画好きの少年がいつしかローマで成功し大物映画監督となるが、その少年時代と青春時代を回想する物語。そのラストに繰り広げられた展開には思わず驚かされ、人生の美しさと切なさに圧倒させられるのである。ストーリーの素晴らしさもさることながら、年老いた母親のふっと見せる人生の悲哀の表情など、どうして当時33歳だった若き映画監督ジュゼッペ・トルナトーレが描けたのかと、尊敬にも近い思いをもったものだった。同じ表現者として、どうにも太刀打ちできないその柔らかで繊細な感性と才能に愕然としたのを今でも覚えている。
 秋という季節のせいか、年齢のせいか。ふとそんな感傷的な想いを甦らせながら、お昼のCMソングにぐぐっと心を奪われてしまったのである。そんな昼下がりのひとときもまた甘く切なく、幸せな時間なのかもしれない。

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